47News 2012年10月3日


【ごみ屋敷問題】説得と支援で撤去進める 東京・足立でごみ屋敷¥例

 路上のごみを調査する足立区職員

 屋外にごみを放置し、悪臭や害虫の発生が周辺住民を悩ませる「ごみ屋敷」をなくす条例が、東京・足立 区で制定される。強制撤去を定める一方、撤去の代行や住人のケアなどの支援もする取り組みは全国初。ごみ屋敷は核家族化や高齢化を背景に各地で確認されて おり、成果が注目される。

 空き缶を集めて入れたポリ袋が玄関から道路まで山積みされ、ハエが飛び交う。東京都足立区の住宅街。近所の主婦は「町内会で協力して片付けたのに」と困惑する。

 悪臭にゴキブリやネズミの発生、放火の心配…。足立区には昨年度、路上に放置されたごみや枝が伸びた庭木などに関し、約1200件の苦情が寄せられた。区内で「ごみ屋敷」として問題視される場所は8月末現在、72カ所。独居や夫婦の高齢者世帯が多い。

 区は9月下旬、ごみ屋敷の解消を目指す生活環境保全条例の案を区議会に提出、来年1月の施行を目指している。

 国土交通省が2009年に行った自治体アンケートでは、250市区町村でごみ屋敷を確認。「ごみかどうかの判断が困難」との声もあった。

 条例は@指導・勧告A改善されなければ、医師、弁護士などの有識者でつくる審議会に諮って命令B正当な理由なく従わなければ内容を公表し強制撤去―と、住人の段階的な説得を規定する。

 自力での撤去が原則だが、難しいときは区による代行や撤去費用の支出などの支援も想定。医師や保健師による心身のケアもあわせて行う。

 自宅を片付けられない理由は、体の衰えや認知症、障害などさまざま。肉親の死などをきっかけに、日常的に行うべきことを行わないか、行う能力がなく心身の安全や健康が脅かされる「セルフネグレクト」(自己放任)の状態に陥った人も多いとみられている。

 「片付けを手伝おうかと区に言われたが断った。自分で片付けてきたし、人に頼りたくない」

 妻と暮らす男性(83)は入院を繰り返すうち、妻が知人からもらった衣服や集めた空き缶を入れた袋で、家の内外がいっぱいになった。区に促され、家の外は60代の息子に手伝ってもらい片付けたが、離れた場所で暮らすため頻繁に頼めず、室内は片付いていない。

 ごみ屋敷問題に対応してきた道路管理課の職員は「家の中がごみでいっぱいだから外に出てくる例が多い」と話す。区はごみ屋敷問題専門の生活環境調整担当課を4月に新設し、問題となる家の住人といかに対話し、家の中まで片付けられるかが課題になっている。

 同課の島田裕司課長は「条例制定で『役所がしつこいから片付けるか』と動いてもらえるようになれば」と話している。

 「ルポ ゴミ屋敷に棲む人々」の著者、帝京大大学院の岸恵美子教授(看護学)が、ごみ屋敷問題の背景にある「セルフネグレクト」(自己放任)や孤立死につながる危険性ついて語った。

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 セルフネグレクトは、自宅がごみ屋敷化した独居の高齢者に多くみられる。

 東京都内の自治体で16年間保健師として働いた経験があり、いわゆるごみ屋敷や、電気、ガス、水道が止まった家に暮らすセルフネグレクトの高齢者と接してきた。

 認知症や精神疾患などで無意識のまま陥る人に加え、自分だけでは片付けられないと意識していても「なんとかできる」というプライドや「迷惑を掛けたくない」という遠慮があり、支援を拒否する人が少なくない。

 私たちの調査では、孤立死に至った事例の8割に生前のセルフネグレクトが確認された。別の調査では、セルフネグレクトの人の5〜7割で、本人や住居が著しく不衛生だった。ごみ屋敷は孤立死につながる兆候として注意すべきだ。

 足立区の条例制定の動きは、ごみ屋敷の片付けを支援する点が評価できる。だが現実には、百パーセント片付けるのは難しい。片付けることのみを評価の基準にせず、本人の心理面のケアを中心に対応し、健康や生活の質を高めることを重視すべきではないか。

 (共同通信)

参考データ 岸恵美子 「セルフ・ネグレクトと孤立死に関する実態把握と地域支援のあり方に関する実態調査報告書」
  http://www.nli-research.co.jp/report/misc/2011/sn110421.pdf